不動産投資は、資産形成と収入源の多様化において優れた選択肢です。既に個人で行っている不動産投資をさらに発展させるための1つの戦略として、法人化は大きな鍵を握っています。
しかし、法人化は一概にメリットだけではなく、デメリットもあります。本記事では、不動産投資を法人化する際の利点や注意点を解説し、法人化する際の課税所得の目安もお伝えします。
法人化に迷っている方はぜひ参考にしてください。
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不動産投資の法人化とは
不動産投資の法人化とは、個人が行う不動産投資を法人として運営することです。これは、投資家が自ら資産管理会社を設立し、その法人を通じて不動産の購入・管理を行うプロセスを指します。
不動産投資における法人化は、税金対策として富裕層に利用されてきましたが、最近ではサラリーマンにも注目されています。
法人化することで、個人所得税率と法人税率の差を活用し、税負担を軽減できるため、不動産投資の節税手法として利用されています。
不動産投資で法人化する6つのメリット
不動産投資で法人化する主なメリットは、以下の6つです。
- 税負担を軽減できる
- 経費計上できる範囲が広がる
- 損失を繰越できる期間が長くなる
- 法人を活用した相続税対策ができる
- 金融機関から融資を受けやすくなる
- 短期売買の場合は譲渡税率が個人よりも低い
それぞれ詳しく解説します。
①税負担を軽減できる
不動産投資での法人化の主なメリットは税負担の軽減です。この効果は、個人と法人の税率の違いから生まれます。
個人投資家の場合、所得が増えると累進課税により税率が高くなりますが、法人の場合、法人税率は一般的に個人の最高税率よりも低く設定されています。
個人の場合、所得税と住民税10%を合わせた所得税率は最大55%に達する可能性があります。一方で、法人の法人税率は、通常15〜23.2%台となっており、個人の最高税率よりもかなり低いです。
以下の表は、個人と法人の税率の違いを示しています。
【個人の所得税率】
課税される所得金額 | 所得税率 | 住民税率 | 控除額 |
---|---|---|---|
1,000円~195万円未満 | 5% | 10% | 0円 |
195万円~330万円未満 | 10% | 97,500円 | |
330万円~695万円未満 | 20% | 427,500円 | |
695万円~900万円未満 | 23% | 636,000円 | |
900万円~1,800万円未満 | 33% | 1,536,000円 | |
1,800万円~4,000万円未満 | 40% | 2,796,000円 | |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
参考:国税庁「所得税の税率」
【法人税の税率】
区分 | 所得800万円以下 | 所得800万円超 | |
---|---|---|---|
普通法人 | 資本金が1億円超 | 23.2% | |
資本金が1億円以下 | 15% | 23.2% |
参考:国税庁「法人税の税率」
所得が900万円を超えると、法人の税率が個人の税率よりも低くなります。高額な不動産所得の場合には、法人化することで個人の所得税率と法人税率の差を利用して節税が可能です。
②経費計上できる範囲が広がる
経費計上の範囲は法人化により拡大します。
法人では役員報酬、退職金、保険料など個人では認められない費用も経費に含められます。これにより、利益を抑え、節税を実現できます。
個人事業主の場合、経済活動は事業者としての行為と、個人の消費者としての行為とに分けて考える必要がありますが、法人ではすべてが事業行為と見なされるため、経費の範囲が広がります。
例えば、法人化により家族に対する給与や退職金も経費にでき、配偶者控除や扶養控除の適用も可能になる場合があります。さらに、法人が役員や従業員のために加入する生命保険の保険料の一部も経費として計上できます。
これにより、不動産投資などで経費計上できる項目が個人よりも増え、所得減少と節税効果を期待できます。
③損失を繰越できる期間が長くなる
法人化すると、赤字(損失)の繰越期間が長くなり、最大10年間利益と相殺できます。例えば、初年度に500万円の赤字が発生した場合、これを将来の利益が出た年に相殺し、税金を減らすことが可能です。
個人事業主の場合、損失の繰越は最大3年間ですが、法人は10年間繰越ができるため、節税効果が高まります。これにより法人は経済的な波に強く、安定した経営を行いやすくなります。ただし、青色申告をしていない場合や5棟10室の事業的規模を満たしていない場合には、損失の繰越はできないので注意が必要です。
④法人を活用した相続税対策ができる
法人を通じた不動産投資は、相続税対策として有効です。不動産を法人名義にすることで、資産の分散が可能となり、個人名義よりも相続税の評価が低く抑えられます。特に複数の相続人がいる場合、法人化によって財産の分配がスムーズに行えます。
また、法人名義の不動産は、代表者の変更で所有が継続され、相続税がかかりません。さらに、家族を役員にすることで役員報酬として所得を移転し、節税につながる効果も期待できます。
⑤金融機関から融資を受けやすくなる
法人は、個人よりも銀行からの融資を受けやすいというメリットがあります。これは、法人が社会的な信用が高く、公開された会社情報や厳密な会計処理が行われているためです。
また、法人は法律上「人」として扱われ、寿命がないため、死亡や相続のリスクを金融機関が考慮する必要がありません。これにより、法人は融資の審査に通りやすくなり、より多くの資金を得やすくなります。
この融資の容易さは、不動産投資の拡大や事業の成長を支援する大きな助けになります。法人化することで、投資の拡大や事業の成長を支援する資金を得やすくなります。
⑥短期売買の場合は譲渡税率が個人よりも低い
不動産の短期売買における税率の違いは、個人と法人で異なります。個人が不動産を短期間(5年以下)で売却した場合、得た所得は「短期譲渡所得」とされ、所得税と住民税を合わせた税率は約39%になります。
一方で、法人の場合は、短期売買でも通常の法人税率が適用されるため、法人の税率の方が個人より低くなります。そのため、短期間での投資回転を考えている法人には税金の面で有利です。
しかし、所有期間が5年を超える長期保有の場合、個人の税率は20%になり、この状況では法人よりも個人の方が税率が低くなります。よって、不動産売却を考える際は、保有期間と売却時の税率を検討することが重要です。
法人化の4つのデメリット
続いて、不動産投資で法人化する主なデメリットは、以下の4つです。
- 初期費用と維持費がかかる
- 法人住民税が毎年かかる
- 法人資金は個人で勝手に使えない
- 個人の物件を法人所有にする際に税金がかかる
1つずつ解説します。
①初期費用と維持費がかかる
不動産投資を法人化するデメリットとして、初期費用と維持費の負担が大きい点が挙げられます。法人設立には、登記費用や定款認証手数料など20万円前後の出費が見込まれ、特に株式会社では25万円程度、合同会社でも15万円程度が必要です。これに加え、司法書士や税理士への報酬も必要です。
また、設立後も税務・会計処理、社会保険料の負担など、維持費用が継続的に発生します。このような設立と維持に関するコストが法人化の大きなデメリットです。したがって、法人化を考える際は、これらの費用も事前に検討することが重要です。
②法人住民税が毎年かかる
法人住民税は、赤字であっても避けられない負担です。個人の場合、赤字時に所得税や住民税の支払いが免除されることがありますが、法人にはこの免除が適用されません。
法人住民税には「均等割」という制度があり、これは法人の資本金や従業員数に基づいて算出されます。結果として、赤字の法人であっても、最低7万円の年間住民税を支払う義務が生じます。
③法人資金は個人で勝手に使えない
法人資金は個人資産とは別物であり、その使用には厳格な制限があります。法人の資金は、法人の業務目的に沿って使用する必要があり、代表者であっても個人的な用途で自由に使うことはできません。
法人資金を個人が使用するには、給与や役員報酬として適切なプロセスを経て移動させることが必要です。このように、法人と個人の資金は明確に区分され、それぞれの資金の使用目的とプロセスには大きな違いがあります。
④個人の物件を法人所有にする際に税金がかかる
個人が所有する不動産を法人に移転する際、税務面の配慮が必要です。これは、不動産取得税や登記費用がかかるためです。
個人事業主が事業拡大に伴い法人化を図る際、所有不動産の名義を個人から法人へと変更するには、登記手続きの費用や司法書士への報酬、さらに登録免許税など追加の費用や手間が発生します。
個人所有の不動産を法人所有に変更する場合、改めて登記費用がかかります。これらのコストは計画段階で考慮し、対策を練ることが肝要です。
法人化する目安は課税所得が900万円を超えるとき
不動産投資における法人化の目安は、課税所得が900万円を超えるタイミングです。この基準は、個人の所得税率が高くなり、法人税率との差が顕著になるためです。
課税所得が900万円の場合、個人の税率は33%に対し、法人税率は23.2%となります。つまり、所得が増えるにつれて個人の税負担が重くなり、法人化による節税効果が大きくなるのです。
例えば、給与所得が600万円、不動産所得が400万円の個人は、合計所得が1000万円となり、税率は高くなります。この場合、法人化によって給与所得は個人所得として扱い、不動産所得を法人所得とすることで、全体の税負担を軽減できます。
法人化を初めから行うか、途中から行うかは状況に応じて異なります。初めから法人化するケースもありますが、所得が低い初期段階ではコスト倒れになるリスクもあるので注意が必要です。
そのため、個人よりも税率が低くなるタイミング、特に課税所得が900万円を超える時点で法人化を検討するのが賢明です。
まとめ
今回は不動産投資における法人化のメリット・デメリット、法人化する所得の目安について解説しました。
法人化が適切かどうかは、個々の給与所得を含めた総収入、投資に対する考え方、そして具体的な投資計画によって異なります。そのため、「不動産投資をするなら法人の方が有利」と一概に言えるわけではありません。
法人化の主なメリットには、税負担の軽減や損失繰越期間の延長などがあります。対してデメリットには初期・維持費用の発生や法人資金の個人使用制限などがあります。
法人化する場合は、ご自身の投資規模や収入レベルなどの状況に照らして適切な判断を下すことが大切です。特に、年間課税所得が900万円を超える場合は、法人化の検討が特に有益となる可能性があります。
最終的な判断に迷う場合は、不動産投資の専門家に相談することをお勧めします。お客様一人ひとりの状況に合わせた運用プランや法人化の提案を行い、貴重な資産を守るためのサポートを提供します。
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