フルローンを組むメリット・デメリット
不動産投資を行う際、初期投資額を最小限に抑えたい投資家にとって、フルローンは魅力的な選択肢となります。フルローンとは、物件購入価格の100%を借入れることができるローン形態です。
自己資金がほとんど不要なため、投資を始めるハードルが大幅に下がります。一方で、借入額が多額になるというデメリットもあり、長期的な返済負担が重くのしかかってくるリスクがあります。
本記事では、不動産投資におけるフルローンのメリット・デメリットを詳しく解説し、投資の是非を判断する際の一助としたいと思います。
不動産投資におけるフルローンとは
不動産投資におけるフルローンとは、物件価格の100%をローンで賄うことを指します。つまり、購入者が自己資金をほとんどまたは全く使わずに、物件を購入するための資金を銀行などの金融機関から借り入れることを意味します。フルローンは、投資家が初期費用を抑えて不動産投資を始めるための手段として利用されることが多いです。
フルローンとオーバーローンの違い
フルローンとオーバーローンは似ていますが、重要な違いがあります。フルローンが物件価格の100%をカバーするのに対し、オーバーローンは物件価格を超える金額を借りることができます。
この超過分は、物件の修繕費やリフォーム費用、購入に関連する諸経費(登記費用、仲介手数料など)に使用することができます。オーバーローンを利用することで、投資家は物件購入時の自己資金をほぼゼロにすることが可能ですが、その分、返済負担が大きくなるリスクも考慮しなければなりません。
フルローンのメリット
それでは、フルローンのメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは以下のメリットを2つ解説します。
- 自己資金を確保できる
- レバレッジ効果を最大化できる
自己資金を確保できる
フルローンの最大のメリットの一つは、不動産投資を行う際に自己資金をほとんど使わずに済むため、その資金を他の用途で活用できる点です。
投資家はこの保有資金を別の投資機会に回すことで、資産ポートフォリオの多様化を図ることが可能になります。また、万が一のリスクが生じた時に備えて、手元に資金を残しておくこともできます。
レバレッジ効果を最大化できる
フルローンを利用することで、少ない自己資金で大きな不動産を手に入れることができます。これにより、レバレッジ効果を最大限に活かすことが可能です。
レバレッジ効果とは、借入金を使用して投資効率を高めることを指し、適切に管理された不動産投資では、物件の価値上昇や賃料収入によって、投資のリターンを大幅に増加させることができます。
ただし、市場が不利に動くと、損失も拡大するため、リスク管理が非常に重要になります。フルローンには一定のリスクも伴いますが、自己資金の少ない方にとっては、収益物件購入の選択肢を広げてくれる魅力的な選択肢と言えます。
フルローンのデメリット
一方でフルローンを活用することのデメリットも当然存在します。
- 月々の返済負担が大きくなる
- 金利上昇リスクがある
- 金融機関の審査が厳しい
- 購入時の諸経費は手出しが必要
ここではフルローンのデメリットについて4つ解説します。
月々の返済負担が大きくなる
フルローンの最大のデメリットは、借入金額が多いため、月々の返済負担が大きくなることです。自己資金を出さずにローン全額を借りるため、その分返済額が増えます。
収入に対する返済額の割合が高くなり、家計を圧迫するリスクがあります。十分な収入と返済計画が必要不可欠です。
金利上昇リスクがある
金利は経済情勢などにより変動します。フルローンは長期にわたる借り入れとなるため、金利が上昇した場合、返済総額が当初見込みより大幅に増える可能性があります。金利上昇は家計への大きな負担増となり、場合によっては返済困難に陥るリスクもあります。
金融機関の審査が厳しい
自己資金がゼロのフルローンは、金融機関にとってリスクが高いローンです。そのため、通常のローンよりも厳しい審査基準が設けられている場合があります。十分な年収と無借入履歴など、厳格な条件を満たさないと融資が認められないことがあります。
購入時の諸経費は手出しが必要
フルローンを利用しても、不動産購入に伴う諸経費(登記費用、仲介手数料、保証料など)はローンの対象外となることが多いため、これらの費用は自己資金で支払う必要があります。これにより、完全に無資金での投資が難しくなり、初期費用としてある程度の現金が必要になります。
フルローンには多くのメリットがありますが、上記のようなデメリットも存在します。リスクを十分に理解し、しっかりと対策を立てることが重要です。無理のない範囲で活用するのがベストな選択と言えるでしょう。
フルローンで融資を受けるには
フルローンを受けるためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。以下に、フルローンを利用する際の具体的な方法を解説しますのでぜひご参考にしてください。
資産価値や収益力のある物件を選ぶ
フルローンを受けるには、物件の資産価値や収益力が重要視されます。金融機関は物件の適正価格や賃貸収入などを審査材料とするため、立地条件が良く需要の高い物件を選ぶことが有利です。収益性が高ければ返済能力も高いと判断されやすくなります。
共同担保を利用する
投資家が新たに物件を購入する際、その物件だけでは十分な担保価値がない場合があります。そういう時に、投資家が既に所有している他の物件も併せて担保として設定することで、総合的な担保価値を高め、金融機関から必要な融資額を受けやすくなるのが共同担保です。
つまり、購入予定物件プラス投資家の保有する別の不動産を、金融機関に対して包括的に担保として提供することで、フルローンなど希望する融資額の実現可能性が高まるわけです。
特に、保有物件の残ローン比率が低かったり完済している場合は、その物件の担保価値が高まるため、共同担保として有効に機能します。
自分の属性をあげる
年齢、年収、職業、借入履歴など、融資審査では借り手の属性が重視されます。可能な限り、自身の属性を高めることで、審査をパスしやすくなります。例えば、収入アップや借入金の返済、会社での地位向上などが有効な対策となります。
既存物件でキャッシュフローが出ていること
すでに賃貸経営を行っており、安定したキャッシュフローが出ている場合、フルローンを受けやすくなります。確実な返済原資があると判断されるためです。賃料収入の実績を示すことで、返済能力の高さをアピールできます。
不動産融資に積極的な金融機関に相談する
金融機関ごとに不動産融資の方針や審査基準が異なります。フルローンを受けるためには、積極的に不動産融資に取り組んでいる金融機関に相談することが大切です。複数の金融機関と比較検討し、最適な条件を探しましょう。
これらのポイントを考慮しながら、フルローンを利用して効果的な不動産投資を進めていきましょう。
自己資金を入れるメリットもある
フルローンは自己資金を温存できることが大きなメリットではありますが、自己資金を入れて収益物件を購入することにはいくつかのメリットがあります。以下でそれぞれのポイントについて解説します。
月々のキャッシュフローが良くなる
自己資金を投入すれば、借入金額が減り月々の返済負担が軽くなります。賃料収入から返済額を差し引いた残りがキャッシュフローとなり、手元に残る金額が増えます。自己資金投入分が多いほど、キャッシュフローは良くなります。投資の健全性が高まり、次の物件購入の原資を貯めやすくなります。
出口で売却しやすくなる
自己資金を用いることで、借入れ額が少なくなり、物件の負債比率が低くなります。これは、将来的に物件を売却する際に、より高い利益を得やすくなると同時に、買い手にとっても魅力的な投資先となりやすいです。買い手は、高い負債を抱える物件よりも、財務的に健全な物件を好む傾向があります。
次の物件購入時にローンが通りやすい
前の投資物件で自己資金を用いたことが、次の物件購入時においても金融機関からの信頼を得る上で有利に働きます。自己資金を投じることは、投資家の財務的責任と計画性を示すため、ローンの承認を受けやすくなるという利点があります。また、前回の投資で良好なキャッシュフローを維持している場合、その実績が次の融資審査においてもプラスに評価されるでしょう。
自己資金を投入するかフルローンを組むかは、物件の種類や購入目的、自身の資金力など、状況に応じて判断する必要があります。両者のメリット・デメリットを理解し、バランスの取れた投資計画を立てることが重要です。
まとめ
フルローンを組むことには、明確なメリットとデメリットが存在します。メリットとしては、自己資金をほぼ使用せずに不動産投資を開始できる点があります。これにより、レバレッジ効果を最大化し、他の投資機会に自己資金を活用することが可能となります。
一方で、デメリットとしては、月々の返済負担が大きくなること、金利上昇のリスク、厳しい金融機関の審査、そして購入時の諸経費が自己負担となる点が挙げられます。
フルローンを利用する際には、資産価値や収益性の高い物件選び、適切な金融機関の選定、自身の属性を向上させる努力が求められます。また、既存の不動産からの安定したキャッシュフローを証明することも重要です。
一方で、自己資金を一部でも投入することで、月々の返済負担を軽減し、将来的に物件を売却しやすくなるなどのメリットが得られます。
フルローンはその便利さで魅力的ですが、それに伴うリスクと責任も大きいため、自己の財務状況や投資計画を慎重に考慮した上で、最適な融資戦略を選択することが肝心です。