2023年度税制改正による新しい生前贈与とは?暦年贈与と相続時精算課税制度の改正点を解説

2024.03.04
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2023年度の税制改正大綱に基づき、2024年1月1日から相続税および贈与税に関する法規が大幅に変更されることになりました。この改正は、生前贈与の加算期間を延長し、相続時精算課税制度に基礎控除を新設するという二つの重要な変更を含むものです。

これらの変更は、相続計画や節税戦略において大きな転換点を迎えることを意味します。従来の方法に依存していた多くの個人や家族は、これらの新しい規則に適応するために計画を見直す必要があります。

本記事では、この税制改正の詳細を解説し、改正がもたらす影響と、個人が取るべき具体的な対策について考察します。2023年度税制改正大綱についてわかりやすく解説しますので、贈与・相続税対策を検討している方はぜひ参考にしてください。

2023年度の税制改正の概要とその目的

2023年度の税制改正により、生前贈与の加算期間の延長や、相続時精算課税制度の基礎控除(110万円)の新設など、贈与を検討している人にとって重要な改正が行われました。これらの変更は、相続計画において新たな対応を求めるものであり、個人の資産管理に大きな影響を与えることが予想されます。

生前贈与とは

生前贈与とは、人が生きている間に自己の財産を他者に無償で移転することを指します。通常、親が子や孫に対して行うことが多く、相続税対策の一環として利用されることがあります。

生前贈与を通じて、贈与者は贈与税の規定に基づき税金を納める必要がありますが、適切に計画された生前贈与は、将来発生する相続税の負担を軽減するために有効です。

しかし、税法は定期的に見直されるため、生前贈与を含む相続計画は最新の税制改正情報を踏まえて慎重に検討されるべきです。

改正の背景と目的

2023年度の税制改正は、若年層への資産移転を促進し、高齢者層に集中する資産の問題と老老相続の増加に対処することを目的の一つとしています。

これまで相続税と贈与税の間の区別は明確でしたが、今回の改正で生前贈与の加算期間が3年から7年へと延長され、相続税と贈与税の一体化が進められた結果、日本の税制が諸外国の制度に一歩近づいたと言えるでしょう。

また、マンション相続における過度な節税策が問題視されたことから、相続税評価額の算出基準の見直しも行われることになりました。

このように、2023年度の改正は、より公平で効率的な税制を目指し、大きな変更をもたらしました。これらの変更により、個人が相続計画を立てる際の考慮事項が大きく変わり、新しい対策が必要となります。

暦年贈与の改正点

2023年度の税制改正では、暦年贈与に関する重要な改正点が導入されました。これにより、生前贈与を行う際の戦略が大きく変わることが予想されます。特に、生前贈与の加算期間の延長は、相続税対策としての贈与の利用方法に直接影響を及ぼします。

暦年贈与と生前贈与加算の関連性

暦年課税制度は、毎年特定の基礎控除額内で行われる贈与に対して贈与税が免除される制度です。具体的には、受贈者1人あたり年間110万円までの贈与が非課税となります。この枠内で行われる贈与を「暦年贈与」と称し、多くの人が節税対策として活用してきました。

しかし、110万円を超える部分には贈与税が適用されるため、その超過分については適切に申告し税金を納める必要があります。

また、贈与者の死後、生前に贈与した財産は通常、相続財産には加算されませんが、改正によって加算期間が延長されたことで、この関係性に変更が生じる可能性があります。この改正は、暦年贈与を利用した相続税対策を再考させる重要な要素となります。

死亡の前3年以内の贈与は相続税の対象

贈与者が亡くなった日から遡って3年以内に受けた贈与は、相続税の課税対象となる「生前贈与加算(持ち戻し)」の対象になります。これは、相続税の計算時に、この期間内に行われた贈与を事実上無かったことにせず、相続財産として加算するという法律上の規定です。

このルールの主な目的は、相続税の節税を目的とした生前贈与を制限し、税制の公平性を保つことにあります。例えば、2023年12月10日に亡くなった場合、2020年12月10日以降に行われた贈与がこの規則の適用を受けます。

持ち戻される贈与財産は贈与時の時価で計算され、以前に贈与税が納められていた場合は、その額が相続税から控除されることになります。この仕組みにより、被相続人の死亡直前に行われる駆け込み贈与による相続税回避の抑制が図られます。

生前贈与加算期間が3年から7年へと変更

2023年度の税制改正により、生前贈与加算期間が従来の3年から7年へと延長されることになりました。この変更は、相続税対策としての生前贈与に新たな制限を設けるものです。

具体的には、相続開始前3年以内に行われた贈与は従来通り全額が相続財産に加算されますが、相続開始3年より前かつ7年以内の贈与については、総額100万円を超える部分のみが相続財産に加算されることになります。

相続開始7年より前の贈与については、税金の計算には一切関係ありません。この新規則の適用は2024年1月1日以降に行われた贈与からとなり、それに伴い2027年以降の相続から実際の影響が見られることになります。

この改正は、相続税法における贈与税の位置づけを強化し、生前与を通じた相続税の回避を防ぐことを目的としています。


出典:財務省「令和5年度税制改正

暦年贈与は相続税対策として意味はなくなる?

2023年度の税制改正により、生前贈与の戦略が見直されることになりました。特に、暦年贈与を使った相続税対策の有効性に変化があります。

改正では、生前贈与の加算期間が3年から7年へと延長され、これにより暦年贈与を利用した相続税対策の有効性が変わりつつあります。一方で、相続時精算課税制度の使い勝手が向上し、今後はこの制度を利用する方が増えることが予想されます。

これは、より公平な税制を目指すための措置で、相続計画において新たな考慮が必要になります。暦年贈与が完全に意味をなくすわけではありませんが、その利用の仕方を再考する時期が来ています。

相続時精算課税制度の改正点


出典:財務省「令和5年度税制改正

2023年度の税制改正では、相続時精算課税制度においても重要な改正が行われました。この改正は、相続と贈与に関する税負担の公平性を高めることを目的としており、特に基礎控除の導入は大きな改正点と言えます。

相続時精算課税制度の基本

相続時精算課税制度は、特定の条件を満たした場合に贈与税の非課税枠を利用できる制度です。具体的には、60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与について、2,500万円までの部分が贈与税から免除されます。

この枠を超えた贈与には20%の税率が適用されます。この制度の大きな特徴は、贈与者が亡くなった時点で、これまでに受けた贈与が全て相続財産として含まれる点です。

しかし、既に支払われた贈与税は相続税の計算から差し引かれます。このように、相続時精算課税制度は、相続と贈与の税負担を平準化し、より計画的な資産移転を可能にすることを目的としています。

なお、基礎控除(3,000万円+(600万円×法定相続人の人数))を超えない限り、最終的に相続税や贈与税の負担がない場合もあります。

相続時精算課税制度は暦年課税は選択制

相続時精算課税制度と暦年課税は、選択制であり、贈与者ごとにどちらの制度を利用するか選ぶことができます。

例えば、父親からの贈与には相続時精算課税制度を適用し、一方で母親からの贈与には暦年課税を選択することも可能です。しかし、一度選択すると、その贈与者に関しては制度を変更することはできません。

相続時精算課税制度を利用する場合、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに、必要な書類を添えて贈与税の申告を行う必要があります。この制度の選択は、個々の贈与の状況や相続計画に合わせて慎重に行うべきです。

年110万円の基礎控除の導入による効果とは

相続時精算課税制度の基礎控除

出典:財務省「贈与税に関する資料

2023年度の税制改正で、相続時精算課税制度に新しく年間110万円の基礎控除が設けられました。この改正により、2024年以降にこの制度を選択すると、110万円までの贈与には贈与税も相続税もかからなくなります。これまで小額贈与でも必要だった申告が不要になるため、手続きが簡単になります。

これまで相続時精算課税制度は、贈与された財産が最終的には相続税の課税対象となるため、税の繰り延べに過ぎないという点でメリットが限定的でした。しかし、この変更により、贈与税のメリットが向上し、親から子への資産移転を促進することが期待されています。これは、より多くの人が制度を利用するきっかけになるでしょう。

税制改正後の贈与税対策

税制改正により、生前贈与の節税戦略が変わります。生前贈与加算期間の延長と相続時精算課税の基礎控除導入が、節税計画の見直しを必要としています。ここでは、改正後に役立つ対策をいくつか挙げます。

暦年課税と相続時精算課税制度のどちらを選択すべきか?

改正後の税制では、相続時精算課税制度と暦年贈与のどちらを選択するかが重要な決断となります。新しく導入された相続時精算課税制度の110万円の基礎控除は、特に相続税の基礎控除を超える可能性がある人に節税効果をもたらす可能性があります。

そのため、選択する際の一つの基準として贈与者の年齢が考慮されます。余命が長くないと考えられる高齢者は、相続時精算課税制度を選択することで、基礎控除内であれば亡くなる直前の贈与でも税がかからないメリットがあります。

一方で、生前贈与加算の7年を超える時間がある人は、暦年贈与を利用し、基礎控除を活用して資産移転を行う方が有利となります。このように、個々の状況に応じて最適な選択を行うことが重要です。

賢い贈与の方法

税制改正により贈与税のルールが変わることで、相続税の負担が増えることが予想されます。そこで、改正に備えて以下のような賢い贈与の方法を検討することが重要です。

値下がりしている財産の贈与

財産の価値が下がっている時期に贈与を行うのは、税制改正後も有効な節税戦略です。特に、改正により死亡前7年間に受けた贈与が相続財産に加算される際、その評価は贈与時点の価値で行われます。

したがって、価格が低い時に贈与することで、将来相続税の計算時に加算される財産の価値を抑え、相続税の負担を軽減することが可能になります。不動産や株式など市場価値の変動が大きい資産に特に有効です。

収益を生む財産の早期贈与

収益を生む財産、例えば賃貸アパートなどを持っている場合、それを早期に子どもなどに贈与することは、相続税の節税対策として有効です。この方法を取れば、家賃などからの収益が親の財産として蓄積されることなく、結果として子どもの相続税負担を減らすことができます。

また、贈与を受けた子どもは、受け取った財産を活用して収益を得ることができるため、経済的な自立を促進する効果も期待できます。このように、早期の贈与は、税負担の軽減だけでなく、資産の有効活用という観点からも、親子両方にメリットがあります。

孫への贈与

相続税対策の一環として、孫への生前贈与は有効な選択肢です。贈与税の加算対象となるのは、通常、相続や遺言によって財産を受け取る法定相続人に限られます。そのため、孫など法定相続人ではない人への贈与は、相続時にその贈与分が加算されることはありません。

この点を利用すれば、資産の一部を孫に直接贈与することにより、相続財産全体の額を抑え、結果として相続税の負担を軽減することが可能になります。

その他の贈与税における非課税措置の活用

その他にも、①教育資金②結婚・子育て資金への贈与に対して、特定の条件下で贈与税が免除される非課税措置があります。この措置により、最大1,500万円までの教育資金贈与が非課税になり、これは2026年3月まで延長されました。

また、結婚・子育て資金に対しては、最大1,000万円が2025年3月まで非課税です。しかし、利用が少ないなどの理由から、次の改正でこれらの措置が見直される可能性があります。この機会を活用し、節税効果を得るためには早めの行動が推奨されます。

まとめ

本記事では、2023年度の税制改正による贈与税および相続税に関する変更点と、それに伴う有効な節税対策について解説しました。生前贈与加算期間の延長や相続時精算課税制度への基礎控除導入など、重要な改正が行われ、これまでの節税戦略を見直す必要が生じています。具体的には、資産の早期贈与、特定の非課税措置の活用、そして特に孫への贈与や価値が下がっている財産の贈与などが有効な対策として挙げられます。

なお、税制の内容は複雑化しており、各個人の状況に最適な方法を選択するには、さまざまな事情を考慮する必要があります。そのため、税務上の問題が複雑に絡む生前贈与については、税理士などの専門家のアドバイスを受けることを推奨します。

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五藤智典
株式会社不動産SHOPナカジツ Nagoya Lounge 支店長

1992年 愛知県生まれ 県立旭丘高校→神戸大学卒
2016年 (株)不動産SHOPナカジツ入社
〜2020年3月 大名古屋ビルヂング店
〜2021年5月 名古屋昭和店
名古屋駅前の店舗・高級住宅地である昭和区の店舗にて、
実需不動産のコンサルティング営業として200件以上の不動産売買に携わる。
「リアルな土地相場」「業者間のネットワーク」「不動産の実務ノウハウ」に関しての豊富な知識と経験を基に、安心安全な不動産取引を第一としている。

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